そろそろ夏だし、アウトドアの季節になってきた。 キャンプまではいかなくても、バーベキューとかはやってみたい。 バーベキューで燻製って、ちょっとしゃれてて良さそうだよね。
そんな貴方に燻製のことを教えちゃいます。
初歩の初歩として誤解を解くところから始めましょう。
まず声を大にして言いたいのは「夏は燻製の季節ではありません」ということ。
細菌の活動が活発になるのは30℃~50℃くらいであり、夏場の気温はちょうどここに当たってしまいます。 燻製は保存性に優れていますが痛んだ素材を元に戻すような魔法の技ではありません。熱燻や温燻(説明は後述します)においては、この危険な温度帯を短時間で通過させて細菌に増殖チャンスを与えず、殺菌力が発揮できる60℃以上に早く持っていくことが肝心なのです。
燻す前の準備をする時にはどうしても材料を常温に置くことになり、夏場は他の料理と同様に燻製にとってもリスクが高まるわけです。 実際、私も夏に燻製を作りますが、素材の保冷には気を遣いますし、決して適した季節ではないと実感しています。
もうひとつ言っておくと、燻製は作った後に熟成期間を置くことで味が落ち着いて美味しくなります。 アウトトアで燻したてを食べるのは、一部の例外や雰囲気の効果を除けば得策ではありません。 バーベキュー自体が煙による燻しの効果を期待する料理法ですが、この場合の煙は燻製とはちょっと違うものですね。
ではまず、燻製の種類について紹介しましょう。
燻製は燻す際の温度帯によって分けられます。
- 熱燻
80℃以上の高温で、だいたい5分~15分程度燻す方法です。
熱源を用いてスモークチップから煙を出させるとともに燻煙箱の内部を高温に保つようにします。 - 温燻
60℃~80℃を保ち、少なくとも30分以上、場合によっては数時間かけて燻す方法です。
熱燻と同じく熱源を用いる方法と、スモークウッドを使ってその熱で温度を保つ方法とがあります。
時間をかける分、食材の水分は抜け、また、比較的保存性も良くなります。 - 冷燻
20℃未満という低い温度で数日から数週間という長時間をかけて燻す方法です。
方法としては、スモークウッドなどで発生させた燻煙を、パイプ等を通して冷やしつつ燻煙箱に誘導する形を取ります。
食材をほぼ生の状態に保つことになるため、できるだけ細菌の活動を抑えられる低い温度を維持しなければなりません。冷蔵庫内で燻すようなものです。
冬場に長時間かけて作らねばならず、失敗し易いという大変難しいチャレンジです。(だからこそ挑戦するという人もいるわけですが)
燻製はそもそもアバウトな調理法です。 燻製には様々なレシピがありますが、たとえば「材料の5%の塩」「3日くらい漬け込む」「熱燻で15分くらい」というように、たいていはザックリとした表現になっています。 しかも実際に、温度コントロールや時間をミスったとしてもそうそう失敗につながることはありません。 熱燻と温燻は厳密に区別されるようなものではなく、熱源やチップの量を調整する目安という程度に考えて良いでしょう。
温度が高いほど短時間で燻製にできる、ただし、燻煙時間が長いほど保存性は良いということは覚えておきましょう。
続いて、燻製を作るための大まかな流れを示します。 ほとんどの燻製はこの手順で作られ、たまたま手順が省略できるケースもあるということになります。
- 味付け(塩漬)
味付けという言葉は燻製ではあまり使われませんが、ソミュール液を作って浸しておくなり塩をまぶすなりして置いておく「塩漬」は保存性を高める目的とともに味付けを行う目的があります。保存性を確保するためには時間をかけて内部までしっかりと塩をいきわたらせることが必要です。しかしそのままでは塩が強すぎるため、塩抜きによって塩分を調整するという手順になります。
もともと味がついている素材を用いる場合は、当然ながらこの工程をスキップすることができます。 - 乾燥
表面を乾かすことにより燻煙がうまく定着する状態にすることが重要です。素材全体の水分を抜くことで味を凝縮しようという場合もありますが、たいていそこまでは必要なく、表面が乾いた状態になることを目指します。
普通は30分~1時間程度、常温で扇風機に当てるなどすれば良いでしょう。 - 燻製
いよいよ本番の燻製というわけです。 - 熟成
何もすることはありません。そのまま放置し、あるいは冷蔵庫に入れておき、味が落ち着いてくるのを待ちましょう。
出来上がった直後の味見で「あれ?」と感じても、熟成を経て一層おいしくなることだって期待できるんです。
たとえばプロセスチーズであればそのままいきなり熱燻15分で熟成を待たずに食べてもなかなかいけます。ベーコンであれば、塩漬1週間、塩抜き半日、乾燥数時間、燻製数時間と時間がかかり、さらに少なくとも2~3日の熟成もさせたいところです。これほど手間が異なりますが、基本的な手順の考え方は同じところにあるのです。
先にも書きましたが、燻製はアバウトな料理法であり、誤差の許容範囲は非常に広いものです。自己流のアレンジも加えながら、失敗を恐れず(まあ滅多にしませんが)、作ることを楽しみたいものです。
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