江戸時代に備中屋長左衛門さんが作り始めたから備長炭。古い地名っぽいけど人名です。
本家本元はウバメガシを原料とした白炭。水に沈むほどの硬くて重い木材を使い、高温で焼成したのちに急冷して作った木炭。材料も選ばれているし手間がかかっている分、高級品になっている。
林野庁の資料を引用してみよう。
黒炭: 炭窯内で空気を絶って消火する方法で製造する木炭。炭化温度は400~700℃前後。炭質が柔らかく、着火が容易で早く大きな発熱量を得やすいため、かつては家庭における暖房用等として広く用いられていたが、炭質にムラがあり、安定した火力を持続できないため、焼肉、鰻の蒲焼き等には不向き。現在の主な用途は、バーベキュー用や茶道用など。
白炭(備長炭): 炭窯外で消し粉をかけて消火する方法で製造する木炭。炭化温度は800℃以上。炭質が硬く着火しにくいが、一旦着火すれば、炭質が均一で安定した火力を長時間にわたって得られるため、焼き鳥や鰻の蒲焼き等料理専門店の業務用の需要が多い。白炭のうちウバメガシ(カシ類を含む)を原料とするものは、備長炭と呼ばれており、特に、和歌山県産のものは、紀州備長炭と呼ばれ最高級品。
白炭は高温で焼成するため純度の高い炭素の塊のようになっており、燃やしたときに余分なガス等が出ない。この引用文には書かれていないが、料理用として適しているという大きな理由はここにある。黒炭でも高い奴は大丈夫だが、安いのだとわずかながらも匂いがあったりするからね。ちなみに、私自身もずっと誤解していたことを白状しよう。実は白炭(備長炭を含む)は黒炭よりも燃えている時の温度は若干低いのだ。しかも黒炭は酸素を与えると(つまり風を当てると)燃焼時間は縮まるけれど、温度はガンガン上がっていく。手をかざした時の熱量とかが白炭の方が強く感じるのは遠赤外線の効果か、それとも思い込みによるものなのか。
白炭の短所と言える特徴はやはり着火性の悪さにある。いったん火が熾きれば後は安定した火力が得られるが、ここにはもう一つの課題が存在する。硬質であるがゆえ、急速に加熱した場合に内部の水分による爆跳を起こす危険性があるのだ。要するに手間と時間がかかる。それでも使うのは、やはり味が違う(気がする)ことと長時間持ってくれるということ、そして(なんとなくだけど)不純物とか安全性とかもある。もちろん黒炭を否定するつもりはない。
さて、話は戻って「備長炭」のこと。白炭であれば何でもかんでも「備長炭」を名乗っている傾向があるが、実は基準がある。全国燃料協会の規格では「白炭のうちウバメガシ・カシを原料としたもので、木質材料は、防腐剤、防蟻剤、接着剤、塗料等の薬剤を使用していないもの。」であり、「固定炭素90%以上」である。今は外されているがJASの規格ではカシを原料とした白炭で三浦式硬度15度以上と定められていた。いずれもカシを使っていなければならないので、他の材料のものは備長炭とは言えないわけだ。
実は「ラオス備長炭」というものがあり、これに興味を惹かれて調べてみた。ラオス原産のマイテュー樹という木材を使っており、そういう意味では備長炭にはならない。ところが、製法に関する特許を読んだところ、硬度、精煉度、揮発分の含有量が基準をクリアしており、断面を電子顕微鏡で観察した結果も含めて備長炭に匹敵することが確認できているのだそうだ。なるほど、と思った次第。ジスコム株式会社さんの取り組みに感心したってのがこの稿の本題。
|
使ってみようかなと思いつつ、つい最近別のものを12kg購入したばかりなので、しばらくは要らないんだった。
追記:最近ではふるさと納税の返礼品で国産備長炭がもらえる。とはいえ、前は良かったんでまた頼んだら、量も減って質(大きさ)も改悪されてしまっていてガッカリという経験をした。もう一度探して前の良かったものと同じレベルのを見付けたんだけど、改悪されないことを祈る。
|